
多方面で活躍する4人の作家さんにお集まりいただき、お気に入りの「七つ道具」を見せていただくシリーズ。今回はその三回めになります。
素晴らしい作品を生み出すその手の延長とも言える道具。どんなものを選びどう使っている?
個性的な作品を作る方々だからこその創意工夫をじっくりご紹介します!
見出し
4人の豪華な作家さん達が集まってくれました!
「あなたの七つ道具を見せてください!」
そんな呼びかけに応えてくださったのはこちらの4人の作家さんです。
1回目はぬいぐるみ作家のミヤタケイコさんへのインタビュー
2回目は刺繍作家の小菅くみさんへのインタビューでした。
今回ご紹介するのは・・・?
羊毛フェルト作家の のそ子さん
七つ道具インタビュー3回目は、羊毛フェルト作家の、のそ子さんです。
のそ子さんは、東京都内を中心にギャラリー展示や各種イベント参加、ワークショップの開催をし、多数の著書が出版されている、人気作家さんです。
確かな造形力によるリアルな動物が主なモチーフですが、どこか奇妙でユニークなその表情や仕草やシチュエーションなどで他の誰にも似ていないセンス溢れる作品を作り出しています。
まずはそんなのそ子さんの作品をご覧ください。
針一本で思いのままの形に
では、のそ子さんの道具を見せていただきたいと思います。
カワウソ姿で説明してもらうのじわじわきますね。かわいい…。
「ニードルフェルティングだととにかく刺すしかないので、
はい。一番大事なものですね。
針先をよく見ると切れ込みが入ってギザギザしていて、ここに羊毛の繊維が絡まることによりフェルト化して固まっていくんですよね。
何種類かあるんでしたっけ。
「私はハマナカをメインに各メーカーの極細タイプを使い分けていま
針には他にもサイズ違いで中針太針とあって、太いものは毛をざっくり刺し固めるときなどの作業で使って細いものは細かい部分や仕上げ用ということになってるんですが、私は最初から最後まで一番細いやつだけで刺します。」
「大物でも極細だけです。このカワウソのかぶりものも。」
ええ!このサイズを極細一本で。それはなぜですか。
「それはですね、もう感触と仕上がりが違うんです。」
確かにのそ子さんの作品は密度がすごいですよね。がっちり固めてあるし表面がすごくきれい。
それにしても気の遠くなるような作業です…。
何本か剣山のようにホルダーにまとまっていてザクザク刺すものも売ってますよね。あれも使わないですか?
「基本的には使わないです。一本だと少しずつ曲面を作っていくことができるんだけど、ホルダーのものはその範囲に同時に力が加わって均等にへこむんです。平面にする時はいいんですけどね。」
「あぶらあげみたいなのを作ろうと思ったらあれがいいですよね。」と、やはり羊毛フェルトを扱い慣れているよしださんが共感すると、「そう、あぶらあげはあれ。あぶらあげを早く作るときはいいですよね!」とのそ子さん。
え?あぶらあげ?あぶらあげって何ですか?専門用語?
「違う違う。勝手に言ってるだけ。」
でもわかるんだ!
「あぶらあげというのはシート状にフェルト化させたもののことで、見た目が油揚げっぽいんですよ。
別パーツでそういう状態のを作って後から付けることがあります。このかわうその耳なんかもそうですね。」
アップで見るとその作り込みにため息が漏れます。この表面のきめの細かい美しさと、骨格や皮膚感をも感じさせるリアルな造形は、極細ニードルで一刺し一刺し形を追求していくからこそだったのか。納得です。
「ただ、植毛する時だけは二本をまとめたものを使います。」
植毛。ライオンのたてがみとかの、毛の長さを生かしながら刺し固めていない羊毛を植え込む作業ですね。
二本まとめてというのはどんな効果があるんですか?
「植毛の時に針一本でやると刺したい毛が逃げちゃうことがあるんですけど、二本だと片方が逃げる毛をクッと抑えるんです。打率が上がる。
使うのは植毛の時だけです。形を作る時に使うと逆に穴が空いちゃうので。」
はー、なるほど!これはご自身でテープで留めたんですか?
「そうです。針同士の間隔は広すぎても意味がないし狭すぎても通らないので、自分の最高の距離にテープで留めたものを使っています。」
最高の距離!
痺れます。自分に最適な道具を作る。こういうの見たかったんです!