
手が不自由でも編み物ができますよと広げる「あみ~ちぇインストラクター」
「あみ~ちぇインストラクター」とは手が不自由な人でもかぎ針編みを楽しめる「ユニバーサルかぎ針・あみ~ちぇ」を世に広めるべく、公式にインストラクターの資格をとられた方々です。
今回は代表の平田さんに賛同し、自らインストラクターになりたいと挙手されたお二人に「あみ~ちぇ」を別の角度から伺ってみました。
鈴木朋子さんは、かぎ針編みのアクセサリー・ニット小物教室「sakurako☆クロッシェ」を主宰されている編み物講師で、なおかつワイヤーレース・ジュエリー(かぎ針でヨーロピアンワイヤーを編む)講師でもいらっしゃり、
遠山美沙子さんは作業療法士として働きながら、編み物教室「あおいろニット」を主宰されている編み物講師でもいらっしゃいます。
─お二人の「あみ~ちぇ」との最初の出会いを教えてください。
鈴木朋子さん(以下名称略):私は2017年日本ホビーショーの前に、SNSで知りました。すごく興味深かったのですが、2017年はブースが見つけられなくて。
もともと既に「あみ~ちぇインストラクター」の資格をとっていらした遠山さんと知り合いで、遠山さんが2018年日本ホビーショーであみ~ちぇブースのお手伝いをされると知り、うかがったのが、あみ~ちぇ開発者であり代表の平田さんと「ユニバーサルかぎ針・あみ~ちぇ」と出会った最初です。
─遠山さんは?
遠山美沙子さん(以下名称略):私は初めて平田さんの記事を読んだ時は「こういうのがあるんだー」というくらいの印象でした。
その後、自分が所属する編み物教室の広報誌に平田さんが載っていて、それを読んだ時に、はじめてリハビリの仕事(作業療法士)と主催している編み物教室があわさったんですね。
両方のスキルを活かせる……と。それで興味を持って、平田さんに直接連絡をしました。
講師だから気づいた「ワイヤーならまた楽しみが増える」
─ユニバーサルかぎ針あみ~ちぇを知っても、なかなか「インストラクター」になろうという人はいないと思うんですけれど、鈴木さんはなぜインストラクターに?
鈴木さん:私の生徒さんの中に、養護学校の先生や福祉施設にお勤めの方や、病院関係者の方などが多いというのもあります。
今すぐあみ~ちぇが必要という方は生徒さんにはいらっしゃらないのですが、「必要な人に知ってもらいたい」と思った時に、ただ「私知っています」と言うより、インストラクターとして発信するほうが信用してもらえるというか……。
あと、地元のコミュニティなどで講座をさせていただくこともあるのですが、公の場で話すときにもただ「こういうのあるんです」と言うより、
インストラクターの資格をとってといったほうが、真剣に話を聞いていただけるかなと思ったので資格をとりました。
─鈴木さんはヨーロピアンワイヤーを使う「ワイヤーレース・ジュエリー」の講師でもいらっしゃいますが、「あみ~ちぇ」を見たときから、ワイヤーで使えるとすぐに思われていたんですか?
鈴木さん:思いました。私は、ワイヤーをきれいに編むためのコツのひとつを「複雑な動きをしないほうがいい」と思っているんですね。
手が不自由な方にはこのワイヤーを編むときに必要な「前に後ろに前に後ろに」という編む作業ができる方が多いと聞いて「行ける」と思いました。
それに加えて、ワイヤーの場合少し鎖編み(くさりあみ)をしただけですごくキラキラしたものが作れるんです。
毛糸を編むのとは違う喜びがあると生徒さんにも感じていただいていたので「あみ~ちぇ」を使って、そう感じていただければいいなと思いました。
作業療法士だから気づいた「動かない手に役割がある」ことの大きさ
─一方、遠山さんは編み物講師でありながら、作業療法士でもいらっしゃいます。作業療法士の視点から見て「あみ~ちぇ」をリハビリになると思われますか?
遠山さん:麻痺した手の機能訓練という意味で使えるとも思います。ですが、他の可能性も感じています。
─と、いうのは?
実際に平田さんが肩を麻痺している方に、これを使って編み物を教えてらっしゃるんですけれど、まったく動かない手に付けられて、もう一つの健常の手を使って編んでいるんですね。
それを拝見して、動かない手は動かないのだけれど「押さえる」という役割、もうひとつの違う意味での役割ができるんだ、と教えていただきました。
─なるほど、別の役割ができる……!
遠山さん:この部分は私が忘れていたところでして、改めて知ることができました。体のリハビリにはなるけれど、「好きなことができる」という精神面で訴えかける部分も大きいのかなと思っています。
現在の施設では使う機会が今のところないのですが、実際に病院や施設のリハビリの場面で広がるといいなと思いますね。
─実際に今働いてらっしゃる施設で使う機会がないというのはどういうことですか?
遠山さん:利用者さんのニーズとして、リハビリに求めるものが、趣味を楽しむよりも体の機能訓練……例えば「歩く」など必然なニーズが高い、そしてマンパワーがどうしても足りないというのもありますよね。
─なるほど。生活するためのリハビリなんですね。
本当は自分の施設でもぜひ使っていきたいという夢というか、想いはあるんです。まずは「あみ~ちぇ」を知っている人が少ないので、広げたいですね。
編み物をリハビリとして扱っているという施設もあると思うので、そういう場所であみ~ちぇを使えば幅も広がるのでぜひ使ってもらえたらなと思いますね。
「身近に必要な人がいる」「広げたいという熱意」は即戦力に
─最後に、今回インタビューさせていただいたお二人は「編み物講師レベル」です。編み物講師レベルではない方でもあみ~ちぇインストラクターになれると思われますか?
鈴木さん:発案者の平田先生もおっしゃっていますが、「編み物ができない方はまずある程度編み物の知識を持ってもらわないといけない」とは思います。ですが、後はやる気の問題も大きいのかなと思います。
─やる気?
私も実際に必要な方が今まわりにいないんです。ですから、交流会のようなインストラクターの集まりに顔を出して、事例や皆さんのお話を聞き、情報としてさまざまなケースを知っていく必要があります。編めなくても編めても条件は同じかもしれないですよね。
─周囲に「必要な人がいる環境」を持っている人は確かに広げやすいですよね。
はい。編めなくても医療の知識がある、とか必要な人が目の前にいる……という人のほうがもしかしたら大きな力になるのかもしれない。
最初からセーター編めるくらい編み物レベルが必要かといったら、必ずしもそうではないと思うんです。私もセーターは趣味レベルでしか編めないので(笑)ですから、目の前の必要な方が求めているくらいのものを提供できれば最初の一歩としては十分だと思います。
【前回の取材記事】
▶【手が不自由でも編み物をあきらめない!】ユニバーサルかぎ針《あみ~ちぇ》開発者・平田のぶ子さんインタビュー
ユニバーサルかぎ針《あみ~ちぇ》(手編みサロンあみ~ちぇWeb)
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ご興味のある人は
平田のぶ子公式Facebook:https://www.facebook.com/nobuko.hirata.581 まで▼インタビューしたお二人の教室はこちら
鈴木朋子さん主催、かぎ針編みのアクセサリー・ニット小物教室「Sakurako☆クロッシェ」
遠山美沙子さん主催、編み物教室「あおいろニット」