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作家さんの「七つ道具」見せてください!〜刺繍作家 小菅くみさん編〜

絵を描くように操る針と糸

続いては針ですが、刺繍針も太さがいろいろありますよね。どう使い分けていますか?

お手持ちの針をずらずらっと。太さと穴の大きさが違います。

 

「針は縫うものの厚みや糸の本数によって使い分けてます。」

綿の布だけでなく、鞄やジャケットのような厚く硬い素材に刺繍しているものもある小菅さんの作品。ベースの厚さ固さに合わせて針を変えます。

糸の本数の使い分けも細かくしてるんですか?

刺繍糸は6本でひとまとまりになっているのを必要な本数に分けて使います。

 

「糸の本数の使い分けは結構しています。基本は1本取りが多いのだけど、動物の毛を縫う時は1〜2本、ジャケットや靴下などに文字を縫う時は3本。稀に6本そのまま使う作品もあります。
糸の本数が多いほど太く穴の大きい針を使います。」

一本どりが多いんですか!
驚愕です。出来上がった作品はこの厚みと密度ですよ?!

どすこい

 

細い糸一本を幾中にも重ねてこの厚みと深みにしていくのはなんと途方もない作業。極細の筆を重ねて油絵を描くようなものではないですか。
動物の毛は2本どりで文字は3本どりというのも、中筆で描くと柔らかさが出て太い筆では強さが出る効果と通じます。

まさに絵を描くように刺繍している。
小菅さんの作品から受ける印象とその制作過程が繋がった気がしました。

針が絵筆なら、糸はさながら絵の具。
拝見した刺繍糸の色数も圧巻です。

その時欲しい色の在庫が手元になくなると困るから、見かけるたびに買い足しているそう。

 

刺繍糸ってメーカーがいくつかあると思うんですけど、そのあたりはこだわりなく色々使ってる感じですか?

「そうですね。コスモとオリンパスとDMCと…色々使っています。こだわりを持たない方がいろんな色に会えるから。」

おお。名言いただきました!

小菅さんの作品は色の使い方も素晴らしいですよね。
異なる色をいくつも重ねている部分と、発色の良い色をべったり大きく使っている部分、淡い色のグラデーションでかすれや滲みを表現している部分、それらが合わさりメリハリのある作品を作っています。
これだけ複雑に色を合わせられるのは持ち前の色のセンスの賜物ですね。

知らなかった!刺繍糸の正しいほどき方

ここでメンバーから質問が出ました。
「素朴な疑問なんですが、刺繍糸ってどうやってほどくのが正しいんですか?
束から引き出すときにいつもキューーーーって絡まっちゃうんです。」

途端に「なるなる!キューってなる!」「私、キューってなってもうダメだって諦めて捨てますよ!」と共感の嵐。これは知りたい!

これが、キューーーーーっとなった状態。なるよね!

 

「これは全部一回ほどいて糸巻きに巻き直すのが本当なんです。巻いた状態で売ってくれればいいのにといつも思ってるんですけど…。」

なんと!ラベルがついた束からそのまま引き抜いていました。
なにか絡まらない引き抜き方の秘訣があるのかと思っていたのですが、そもそもこのまま使うものではなかったとは。

じゃあそこから更に分けるのはどうやります?
6本で一塊になっている糸を2本どり3本どりするために分ける時も、やっぱりキューーーってなっちゃうんですが。

一難去ってまた一難の、更なる「キューーーー」

 

この質問にも、
「なるーーー!」「わかる!」「キューってなってブチって切って捨てます!」
ともう一湧き。
誰だすぐ捨てる短気な奴は…と思われるかもしれないですが、これみんな胸に手を当てて振り返ったらやったことある人結構いるでしょう!

「それはですね。一度ならしてねじれをとって、端を持って間に指を入れてこう、スーっと割ります。」

美しい指さばきでの実演

 

見事に絡むことなく分けていただきました。

これ、刺繍やる人には当たり前のことなのかもしれませんが、なんとなくでやってきてしまうと正しい使い方を知らないで過ごしてしまうんですよ。
今更だけど聞けてよかった!基本大事ですね!

布には布の、糸には糸の、はさみ

ツヴィリングの裁ちばさみとユザワヤで購入した小型のはさみ、糸切りバサミは2種。

「大きいハサミは大きい布の裁断に、先の細い布切りバサミはアクセサリーの猫の耳部分を切ったりする時などの細かい作業をする時に使います。」

ツヴィリングヘンケルスのハサミ、私も一回り小さいのを使ってます。
軽くて使いやすいですよね。

こっちの糸切りバサミは珍しいですね。

「これはアメリカのお土産です」

ちょっと男っぽい無骨な形で日本にはない雰囲気ですね。かっこいいなあ。

よく見ると鷹のような鳥のマークが。固そうに見えるけどそうでもなく、ちゃんと使いやすいですよとのこと。

やっぱり糸を切るには糸切りバサミが使いやすいですか。

「使いやすいですよ。6本パチンときれいに揃えて切れます。布のギリギリではみ出しが少なく糸を切れるのもいいです。」

そうですよね、糸用に特化したハサミですもんね。
私は布も糸も同じタイプの小型の裁ちばさみを使いまわしちゃうんですよね…。ちゃんと糸切りバサミ使ってみます。さすがに紙とは分けてますけど。

この時一人が「実は紙と分けてない」という声を漏らしたら騒然としたので、余談ですが現場の声をどうぞ。

「紙はダメですよね。」「紙は先輩からの言い伝えでダメと言われてます。」「夜に爪切っちゃいけないくらいには禁忌。」「蛇が出るんでしたっけ。」「それは笛を吹くとかだったと思う。」「布が切れなくなりますよね、なんでですかね。」「毒が出るんですかね。」「毒は出ないよ!」「摩擦が大きいからじゃないですかね。」

紙はダメ!絶対!
裁ちばさみで紙を切ろうとして何人がキャーと叫ぶか実験したいと思った次第です。

この記事を書いた人

せこなお
キャラクター商品のぬいぐるみ原型を多数手がけるぬいぐるみデザイナー及びパタンナー。 ぬいぐるみ原型では、三井住友銀行公式キャラクター「ミドすけ」ぬいぐるみ、「こぐまのケーキ屋さん」ぬいぐるみ、映画「海猿」グッズ用キャラクターデザイン、など。 オリジナルの雑貨企画制作でも布モノが得意。 http://sekonao.com
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